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執筆者の写真辻あさひ

"Running to Cosmos"直前!田中熊インタビュー

 弊団体と所属作家の田中熊主催による初公演、Picnic Dance Channel #1 田中熊 "Running to Cosmos" の初日まで1週間を切りました。

 そこで、今回の作家の田中熊にインタビューを行いました。作品の創作過程や稽古について、かなり深堀りしています。

 本インタビューは、Chicken Picnic Club 企画クリエイティブを担当している、辻あさひが行いました!

 

2024年11月8日(金)〜10日(日)に開催を控えた、Picnic Dance Channel #1 田中熊 "Running to Cosmos" は、田中熊初の長編作品となる。田中はChicken Picnic Clubの所属作家であるが、現在に至るまであまり公に向けた活動はしていない。しかし、動きも短編作品も日々作り続けており、その地道なこだわりは田中の作品の節々から感じられる。
今回、初めて公に作品を発表するにあたり、どのようなプロセスを経たのか? また、共同制作として、ゲストアーティストが参加している点についても詳しく話を聞いた。

田中熊 プロフィール
宮崎県出身。
現代の踊り子に興味を持ち、見せることを想定したフレーズを、年間に150前後創作している。過去作品の『もういちど生まれる』(2023) のデモビデオを持ち込んだことで、Chicken Picnic Club所属作家としての登録に至る。


 

ーー今回の作品を構想したきっかけを教えてください。

田中:ある晩、同居している家族が夢にうなされていたんです。それで、手が空をつかむように動いていました。その時は家族を心配に思っただけですが、だいぶ経ってから、今度は自分が悪夢にうなされました。疲れていて、居間で寝落ちしていた時でした。そうしたら、この様子はとてもダンス作品で起きていることに近いと思えました。それがこの作品の最初です。


ーーどのようなところがダンスに近いと思ったんですか?

田中:ダンスというだけでなく、「ダンス作品」で起きていることに近いという点が重要です。誰かが夢にうなされているのを見たとき、自分が夢にうなされたとき、このような状態を重ね合わせ、混ぜていくのがダンス作品なのではないかという気がしています。


ーー田中さんが今作のクリエーションで行った作業は、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

田中:あまり作品を上演する前には言いたくないのですが、今回初めて試みたのは、イメージプロットを書くことです。自分は普段から妄想が止まらない性分で、動いているものを見ると色々な連想をします。踊りに対しても同様で、こんな踊りが見たいというイメージがどんどん出てくるので、これをきちんと言葉にしておけば指針になるだろうと思ったんです。


ーーイメージプロットとは、演劇でいう戯曲に近いものでしょうか?

田中:戯曲の書き方については知識がないので、完全に我流です。もしかすると似たようなことを、戯曲の書き方できちんと追究している方がいらっしゃるかもしれません。今回はダンス作品のためのプロットなので、ひとまず自分の思うように書いてみましたが、今後も様々なプロットの作り方を試していきたいです。"Running to Cosmos" のイメージプロットは、時系列が入り乱れつつ入れ子状に比喩が重なるめちゃくちゃなものになりました。それはそれで面白く、感覚的に繋がる比喩がたくさん書き留められたので、自分では気に入っています。


ーー今回は共同制作とのことで、出演者を含めゲストアーティストの方が複数いらっしゃいます。こういった状況でイメージを軸に据えて作ることの壁はありましたか?

田中:もちろんありました。一般的に使われている言葉を、自分なりのイメージとくっつけて使ってしまう癖があるので、クリエーション中は「それってどういう意味?」ときかれることが多かったです。最初はうまく伝えられないことで落ち込みましたが、ドラマトゥルクの方と相談して、イメージプロットを整理してから共有してみると、そちらのほうがうまく伝わりました。イメージを軸に作る場合、自らのイメージを分析し、こじつけでいいから感覚的に納得できる言葉や定義、理屈を作っていくことが大事だと痛感した瞬間です。自分なりの文脈を作らない状態で比喩表現を使っても伝わらないのは当たり前だと、今ならわかるのですが・・・


ーー確かに、インタビュー冒頭の夢にうなされる話もイメージ的で、パッと聞いただけだときちんと理解できていないような感じはあります。

田中:そうなんです。だから、クリエーションメンバーもモヤッとして、作家のイメージが「みんなで解かなければいけない謎」みたいになってしまう。もちろん他のメンバーも、誰かのイメージをみんなで紐解こうとしてしまう不毛さは理解しています。だから、踊るときにも理解していたほうがいいのか、作家がわかっていれば問題ないのか、など質問をしてくれることが多く、とても助かりました。


ーー他のダンス作品の現場でも出てきそうな悩みですね。今回、田中さんはほとんど初めて会うメンバーとの創作だったと思います。いかがでしたか?

田中出演者の1人、畠中さんとは旧知の仲なので、話しやすくて色々相談していましたし、ドラマトゥルクの丹羽さんとはかなりの時間を割いて対話しました。丹羽さんは相槌を打っているか質問をしてくれるだけで、あまり意見を言いませんが、イメージの中に構造を見出す作業が対話の中で自然と起きているように感じました。
また、出演者の木ノ内さん、藤村さんはダンサーとしての経験が豊富で、クリエーションの現場に慣れていますし、藤村さんは作品をご自身でいくつも作られています。最初は「ダンサー」としてどこまでお願いするべきかと、肩書きの持つ領域を過度に気にして、共有すること・しないことを分けていました。しかしどうにも行き詰まったとき、お二人にやりたいことやイメージを思いきり共有してみたら、具体的に動きにするうえでの懸念や、クリエーションで既にやってきたことと照らし合わせて腑に落ちたことなど、たくさんのフィードバック・アイディアを出してくれました。何でもイエスとは言わないが、こちらが尋ねるまで辛抱強く待ってくれる、そんな魅力があります。
照明で入ってくれている福永さんは、ご自身も踊られていることもあって、とてもコミュニケーションがとりやすいです。秋になってから駆け込みでお願いしましたが、自分がやりたいこともしっかり理解したうえで、照明の次元でできることをとても丁寧に考えてくれています。
一人ひとりの話はもっと話せるんですが・・・長くなってしまうのでまたの機会に!


ーー現時点で、作品に対して何か手応えを感じている部分はありますか?

田中:出演者の3人からは、「踊っているときの実感と見え方が全然違う」「周りが見えなくなる」などというフィードバックをもらうことがありますが、自分にとってはこれが手応えのように感じています。踊り手が、どう見えるかをしっかり理解してコントロールする、これも素晴らしい技術です。ただ今回は、踊り手と、それを観ている人々の間に、踊り手のからだを置きたかった。だから、実感と見え方(からだの在り方)がずれているのは非常に良いことだと思います。
行っている作業は、シンプルに動きの素材を作って構成しているだけともいえますが、ちょっとした工夫を重ねているので、これが良く働いているとしたら、とても嬉しいことです。


ーー本番が非常に楽しみです。この記事を読んでくださっている方々や、公演を観にきてくださる方々に何か伝えたいことはありますか?

田中:こうして文章がインターネットに載りますが、この文字は自分の考えていることにすぎません。インタビューを読んでもらえているだけでも本当に嬉しいですが、自分が辻さんの質問に答えて文字になり、画面に映って誰かの目に映る。そのうちの誰かがからだを劇場に持ってきて、踊るからだと出会う。そういう道筋が開ければ、このうえない喜びです。
観にきてくださる方々は、自らのからだを劇場に持ってきてくれます。これは、どんな人も変わらない。等しく目の前にからだが並ぶということ、素晴らしいことだと思います。
自分は普段している仕事の都合で、皆さんの前に顔や名前を出すことができません。これを申し訳なく思います。ただ、自分は自分の全力で作品に向かい合い、どんなからだでどんな顔をしてこれを観てくれる人がいるのか、そればかり考えて作っています。作品をいいと思ってもらえたら何よりですが、つまらないと思っても、寝てしまっても、ただこの場所にからだを持ってきて、私とあなたの間にからだをごろんと置いてみる。この作業を、たくさんの方々としてみたいです。興味を持ってもらえたら、ぜひお越しください。


 

Picnic Dance Channel #1 田中熊 "Running to Cosmos"

11月8日(金)〜10日(日) ★全5回
シアターバビロンの流れのほとりにて

公演特設ページはこちら ↓
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